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日本の子どもの文化編纂にあたって
「日本の子どもの文化」は文化庁の助成事業として、1976年度より毎年発行を続け、この2005年版で28年目を迎えます。
 この編纂事業にあたってきた子ども劇場は誕生して39年間、子どもたちに生の音楽や舞台に触れる機会を、各地域でつくることを大きな柱として歩んでまいりました。そして全国の各地域で子どもと向きあい続けて、いま改めて感じることは、設立された当時以上に、子どもたちが文化芸術に触れ、体験することの意味、大切さがずっとずっと増してきているということです。
 ご承知のように昨年、小学校6年生の女の子がクラスメイトを「消去」してしまうという事件が起き、その1年前には中学1年生の男の子が4歳の子を殺すという事件が起きました。教育、保育に関わる人々は非常にショックを受けられたのですが、そのショックを一言で言えば「もう子どもが分からなくなった」ということでした。教育委員会をはじめとする方々が命の大事さや心の教育をもう一度見直そうという、とり組みもされたようですが、抜本的に子どもたちの生活環境、あるいは生育条件を変えなければいけないのではないか、というのが私たちの思いです。
 まず、社会状況として認識しなくてはいけないのは、39年前と比べても、子どもたちの言葉によるコミュニケーション能力のレベルが極めて低くなっていること、人間関係が壊れたときに、それを修復する力が極めて弱くなっているという点にあります。子ども同士のイキイキとした地域の遊びの文化に替わるものとして登場した、電子映像メディアが、人間と人間のふれあいの時間を大きく奪っているということについて、大人たちがきちんと対応する必要があることを痛感します。
 そして、こうした認識の基に何をするべきかという答えの一つが、2001年12月に制定された「文化芸術振興基本法」であり、子どもたちの豊かな人間性を涵養する文化芸術に関する体験の重要性がここに謳われています。
 そういう意味で生の文化、生の芸術の重みをもう一度考え直してみることは非常に大きな意味があります。そこで今回は、2004年7月「KIDS&ARTS2004 子どもと文化芸術の出会いをコーディネイトする?子どもの育ちにおける、文化芸術の果す役割を探る?」と題して開催した、講演とシンポジウムの内容をまとめました。“子どもの表現活動”の成果を通して、次世代を担う子どもたちの育ちにおける文化芸術の大切さと、子どもと優れた文化芸術体験・アーティストの出会いをつくる、アート・コーディネーターの役割を探ったこの資料が、子どもが育つ地域社会づくりにお役に立てば幸いです。
 最後になりましたが、資料作成にあたって貴重なデータをご提供いただいた各芸術団体、7月の「KIDS&ARTS 2004夏」で共催いただきました俳優座劇場、ご協力いただきましたみなさまに厚く御礼を申し上げます。
 また、私どもの活動をご理解いただき、助成を実現してくださいました文化庁に、心からお礼を申し上げます。

2005年3月
特定非営利活動法人 子どもNPO・子ども劇場全国センター
代表理事 清川輝基

もくじ
「日本の子どもの文化 」 編纂にあたって...................3
-清川輝基-
〔A〕子どもと文化芸術の出会いをコーディネートする
第1章
子どもと文化芸術
-生きる力と文化の力-....................7
-播磨靖夫-

第2章
子どもと文化芸術
-子どもにとっての文化芸術の果たす役割-...15
-平田オリザ-

第3章
シンポジウム
子どもの育ちにおける子どもの文化芸術の役割を探る!
子ども文化交流フェスティバル2004
-子どもの表現活動体験を通して-....29
-小池博史- -水嶋一江-
  -柳亭燕路- -福田房枝-